「今夜はヒマな夜だなあ。ダイス。ひと勝負するか?」
「いいけど用心棒は弱いからなあ」
「うるせーよ。本気出すからな。オレが先に親をやるぞ。
ほれ。ダイス。ばーんと賭けろよ。ギャラもらったばっかだからオレは景気がいいんだぜ」
「じゃあ遠慮しないでいくよ。黒猫の第六感では4か6だね」
用心棒は紙コップにサイコロを入れてカラカラと振ります。
「勝負!あ。4じゃねーか。ちっ。ダイスの勝ちだ」
「まいどありー」
「くそ。もう一回。今度はダイスが親だ。取り戻すからな」
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黒猫ダイスはフラミンゴ通りの裏にある「秘密カジノ」のそばで生まれました。
そこの秘密の出入り口の用心棒といつの間にかなかよくなっていました。
「ダイス。客が来た時は隠れろよ。オマエには罪はないんだけどさ。
黒猫を見た日は『運が落ちる』って迷信を信じてるヤツが多くてさ」
用心棒は髭もじゃの坊主頭の大男。
でもダイスにはいつも優しくてご飯をくれたりギャンブルを教えてくれました。
「黒猫嫌いの客」が来た時はダイスは用心棒のダブダブスーツのズボンに隠れました。
ダイスはなぜかズボンの中にいると安心しました。用心棒は町でいちばんケンカの強いオトコです。
でもサイコロバクチにはいつも負けてばかり。
「ダイス。オレはギャンブラーになりたいよ。一攫千金はオトコのロマンさ。
用心棒のギャラじゃ家の女房にもガキにもいい暮らしさせてやれないからな」
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ある風の強い夜。
深刻な顔で用心棒はダイスに言いました。
「ダイス。話がある。嫌なら断ってもいい。実はガキが病気になっちまった。
手術にカネがいる。大金がいる」
用心棒はタバコに火をつけました。
ダイスはなんだか胸がとくんとくんとしました。
「カネが欲しい。でもオレはサイコロが弱い。地道にやってたんじゃあ大金は稼げない。
一発勝負だ。だから『イカサマサイコロ』を手に入れてきた。これから勝負に行く。
ここからが頼みだ。オレが酔ったフリをしてちょっとした騒ぎを起こす。
その隙を狙ってテーブルのサイコロをこのイカサマサイコロとすりかえてくれないか?」
「ねえ。お金ならいままで用心棒から勝ったお金と
ボクのおこづかいがあるからそれじゃあダメなの?」
「全然足りない。手術は大金がいるんだ」
ダイスは「イカサマがバレて痛い目をみたオトコ達」を何人も見てきたからとっても恐い気分です。
でも。用心棒にはたくさん優しくしてもらったから。
「やるよ。きっとうまくやってみせる。用心棒には世話になってるから」
ダイスは緊張しました。
とってもとっても緊張しました。
そしてダイスはしくじりました。
秘密カジノの親分に見つかってしまったのです。
「この黒猫!イカサマやりやがったな!ふん。用心棒の差し金だな!
野郎ども。こいつらをやっちまえ!!」
用心棒が叫びます。「ダイス!!トイレの窓から逃げろ。そして何があっても絶対に戻ってくるな!」
ダイスは一目散で逃げました。
気がついたらダイスは知らない場所にいました。
ダイスは自動販売機の上に隠れました。
三日三晩そこでじっとしていました。
「用心棒はケンカが強いからきっと大丈夫だよね」
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その次の日ダイスはあるオトコに話しかけられました。
「こんにちは。ボクは探偵だけどキミは黒猫レインかな?」
ダイスは探偵の「用心棒のようなダブダブズボン」を見て涙が出てきました。
思わずそのズボンに飛び込んでたくさん泣きました。
「どうしたの?恐い目に遭ったのかい?レインハウスに行こう。そこには仲間がいっぱいだよ」
ダイスは詩人に「起こったコト」を話しました。
「よし。ここでいっしょに暮らそう。用心棒のコトは探偵に調査させるよ。
そのかわり。イカサマはなしだよ」
探偵の報告
用心棒はたんこぶがたくさんになったがイカサマの事情を話したら
親分は許してくれて大金を貸してくれた。ダイスが「レインハウス」で暮らしてるコトを喜んでいた。
ダイスくんにこう伝えて欲しいと。
「たまには手紙でもくれ。気高く立派に育って欲しい。用心棒より」
レインを相手にダイスは時々サイコロバクチをして遊びます。
「イカサマなし」でもレインは弱いのでいつもオヤツを巻き上げらます。
たまに用心棒が送ってくれるお菓子をレインと食べています。
だから実際は「チャラ」ってカンジです。
おしまい