file.7 番外編 そりたの警告

そりたはネコ。オレが初めて一緒に暮らしたオスネコ。
誰ハロに登場させたかったけれどいい感じにならず断念した。
黙っていればわかる訳もないマボロシの歌詞だけどこれを機会にそりたについて話す。... [続きを読む]

file.6 ジローの瞳

ジローはひとつ年上の中学の先輩。不良でも優等生でもスポーツマンでもない。
流行り映画を一緒に観に行ったこともあるし音楽も聴いていたけど夢中になることはなかった。
この年齢の男にしては女にも恋愛にも興味がないみたいで学校では退屈そうだった。
平均的な家庭に育ち特に問題はないけど特に誇るようなところもないタイプ。
ジローはどこにも属していなくてゲームセンターとパチンコ屋にいつもひとりでいた。
オレが高校生になりパチンコ屋に行くようになりジローと改めてなかよくなった。
ジローは高校へ行かずにバイトをしながらプロのギャンブラーを目指していた。
パチンコ素人のオレに裏技から店内のシステム・イカサマに加担する店員などを教えてくれた。
「あのチビのおっさんは競馬で借金あるからさ。5千円渡せば台に細工してくれる。
5千円払っても儲かるんだ。でもだからってしょっちゅうやってたら店にバレるからね。
それと最近入った新台におもしろいクセを見つけたんだ。
まだテスト飛行だけどもっと絞り込めばイカサマより合法的に確実に勝てる」
誰にでも向き不向き・得意不得意がある。
勉強も運動もパッとしなかったジローだけど博打の才能はずば抜けていた。... [続きを読む]

file.5 ジョニーウォーカーのラジカセ

横浜外人墓地の裏側に「元町プール」がある。
ウォータースライダーもなにもアミューズメント的なものは一才ない平凡な市営プール。
利用料金も安くスタッフも監視員ものんびりしていて当時はプールサイドでもタバコが吸えた。
観光案内に特に記載されていないし偶然発見した観光客がプールに入ろうと思っても
売店もないから水着を持っていなければプールは使えない。
だから必然的に元町プールは地元の人が中心になった。土地柄休日の米兵とその家族や
アメリカンスクールの生徒・平日の昼間にのんびり日焼けしている怪しげな人々。
地元ヤクザの引退した親分さんがリハビリのためにプールを歩いている姿もよく見かけた。
親分さんの両サイドを支えリハビリを手伝う若い男は二人とも真夏でも刺青が見えないように長袖。
それなりに有名らしいプロレスラーの巨体は目立った。
彼は共通点不明な奇妙なネーミングのグループを作って
毎日通い同じ場所に座り持ち込んだ大きなクジラの浮き輪などを子供達に無償提供していた。
まあオレも他の人から見れば「長髪のにーちゃんは何者?昼間っからプラプラして」となるのだろう。
通いつめたというほどじゃないけれど夏になると儀式のように時間を作って元町プールに行った。... [続きを読む]

file3 キラージェイの香り

キラージェイ。
細く長い手足と少し茶色いカールした長髪。青みがった瞳と胸をはだけたシルキーなシャツ。
そのアブない笑顔はイギリスの人気ロックバンドのボーカルみたいだったけれど
キラージェイは武闘派チャイニーズマフィア***会のNo.3。
見上げられるために産まれてきたような背の高いキラージェイが鋭く睨みつけると
アンダーグラウンドなトラブルは暴力沙汰になる前に解決していたらしい。... [続きを読む]

file.2 メリーゴーラウンドの恋

メリーゴーラウンド。もちろん本名ではない。本名はありふれたカッコよくない名前。
趣味が切手集めで酒もタバコもやらない生真面目な防火責任者のようなスクウェアな名前。
「結婚詐欺師・ペテン師」のイメージとはあまりにも違うし唄いにくいからオレが適当に名付けた。... [続きを読む]

file1 マリーの涙 

横浜の本牧には駅がない。30分歩くかバスか。夜中に遊ぶなら飲んでも自家用車。
そもそも「本牧」はひとつの町名ではない。影の横浜地域をザックリまとめた通称だ。
不思議な街「ホンモク」には米軍兵士が暮らす「ハウス」があった。
一般のレコード屋ではゲットしにくいジャズが流れていた。... [続きを読む]